「黒龍」(こくりゅう)と読みます。黒龍は福井県吉田郡「黒龍酒造」で造られている清酒です。
創業は1804年。初代蔵元は黒龍の酒名にもなっている石田屋二左衛門。
この地は水質に恵まれ、全盛期には17を数えた酒蔵も、今となっては石田屋の屋号を持つ黒龍酒造の他一軒。
七代目蔵元水野氏の時代、熟成酒の可能性を探り、少量生産ながらも高品質なお酒を追求。
武骨なまでに質を追い求めた結果、黒龍は「粋」な酒として世界で認められます。
伝統的な文化である日本酒の良質な部分を守り続ける、それが黒龍の担う酒造りの未来です。
銘酒の原点
それは仕込水にあります
名水が湧き出る場所には名醸蔵が多く存在します。すなわち名酒に「水」は欠かせないということ。
黒龍が醸造されている松岡も、小さな町ながらかつては17もの蔵元が軒をつらねた名醸地。
この地は、霊峰白山山系の雪解け水が長い年月をかけ、山の滋養という濾過を経て、再び名水として湧き出ます。
近くを流れる福井県最大の河川「九頭竜川」には、清澄な水を象徴するように、鮎やサクラマスが育ちます。
山から大地へ、自然のフィルターを通過して澄み切った九頭竜川の伏流水は、軟水の特徴が活きた軽く軟らかくしなやかな口当たり。
この水こそが、黒龍が目指す綺麗でふくらみのある吟醸酒に最適な水となります。
よい米、それもまた銘酒の原点
篤農家(とくのうか)が精魂込めて栽培した米はよい水に匹敵するほど酒造りには重要な原料。
黒龍酒造は特に米にこだわる全国の11蔵元と共に「フロンティア東条21」というグループを結成しています。
酒造好適米山田錦の生産地として特A地区にランクされる兵庫県東条地区の米の素晴らしさを伝え、
世に広めていこうと活動を続けています。
黒龍酒造で醸される酒は、東条産の山田錦、福井県大野産の五百万石等と、すべて酒造好適米を使用。
選び抜かれた上質の米だけを丁寧に磨き上げ、高品質の酒造りに日々挑む。それが黒龍の酒造りの真髄です。
こだわりの酒
黒龍酒造において「吟醸酒」は大きなウェイトを占めます。
昭和50年には当時まだ一般的でなかった大吟醸酒「龍」を発売。龍は日本一高価なお酒として注目を集めます。
以来大吟醸、純米大吟醸、吟醸、純米吟醸と多くの吟醸酒を発表します。
杜氏の長年の経験と莫大なデータ、麹に対する愛情、純粋で健全な酵母を育むという単純明快にして難関な作業など、
黒龍の酒造りにおける一つ一つの工程への熱量は群を抜いています。
「搾り」「貯蔵」
多くの苦労が報われ出来上がる極上の一滴
酒造りでは最初の洗米から搾る工程までの間、長いものでは50日以上を要します。
「搾り」の際、高級酒では熟練の技を必要とする「袋吊り」が採用されます。袋吊りでは修練を積んだ蔵人がその作業を行います。
その他のお酒では「槽」と呼ばれる搾り機が使われます。これは特注されたもので、古くからの圧縮機と同じ圧搾能力を再現し、変わらぬ味を生んでいます。
搾りの後は「貯蔵」。風光明媚な福井の土地では素材の味を生かした食が多いため、その風味を引き出せるよう繊細で程良い旨み、バランスの良い酒が良いと考えられました。
黒龍では貯蔵は低温にてじっくり熟成させることで滑らかな舌触りや品のある貯蔵を行っています。
貯蔵の設備は1,200平方メートルを超える広大な土地にずらりと並び、それぞれの酒に合わせた最良の貯蔵が採用されています。
気品は様々なところから
黒龍では酒の味は勿論、細部にまで気を配っています。
クリーンルームを併設した瓶詰めラインはさながら細菌などを扱う研究室のよう。
ラベルにも気を配り、高級酒の見た目が高級でないと飲み手の感動が薄れてしまうといったところから一部のお酒には地元の名産品「越前和紙」を用いたラベルを採用。
また720mlのボトルは黒龍酒造オリジナルのボトルで、「伝統と革新さ」を感じさせるデザインに。
そういった細やかな心配りが黒龍が「粋」な酒と呼ばれる所以かもしれません。
黒龍と九頭龍
黒龍の酒を一言で表現するならば「粋の結晶」と言えるかもしれません。
酒造りへの深い愛情が感じられるお酒。繊細で上品な味わい、主張は穏やかながらも確かな存在感を感じます。
日常を非日常に変えてくれる、そんな特別な味わいが黒龍にはあります。
日常に寄り添うお酒「九頭龍」
黒龍酒造が造るお酒には黒龍以外に「九頭龍」があります。
九頭龍のコンセプトは冷やして良し、燗して良しの、日々の食卓に寄り添うお酒。
普段の家飲み酒に嬉しい価格設定で、黒龍に比べふくよかな米の風味が魅力。
決して黒龍の下位ランクのお酒ではなく、また違った視点から黒龍を楽しめるお酒です、