蔵があるのは三重県、伊勢南部。豊かな自然、海と森のコントラスト。今なお息吹を感じる神話の数々。
付近には『古事記』『日本書紀』などの歴史書に記された神話にまつわる地が多数あり、神話の国とも呼ばれ、五穀豊穣の地としても知られています。
伊勢神宮に仕える際に、斎王が櫛を投げ決意を新たにしたといわれる「櫛田川」と、伊勢神宮を訪れた人々が禊(みそぎ)をして穢れを祓うために使われた国内屈指の清流「宮川」。
この2本の川に挟まれた紀州街道沿いの山里に蔵はあります。
水に恵まれたこの地で酒を醸し、八代、百六十余年の歴史を誇ります。
所在する河合の「河」と蔵主の襲名「武八(ぶはち)」の武を合わせ、『河武』。味噌や醤油の醸造も行っているところから「酒造」ではなく『醸造』を名乗っています。
河武醸造のもつ信念
その昔、弘法大師が掘ったと伝えられる「二つ井」と名付けられた湧水があり、その水を汲み上げて、丹念にお酒を造っています。
どんなに時代が変わっても、こと酒造りにおいては機械任せでは思うようにならず、人の力、自然の恵みに頼る部分が多く、
酒造りを極めようとするほど、自分たちの力及ばぬところにある神秘への畏敬の念が深まります。
さらには蔵が大切にしている、神道で重んじられる「常若(とこわか)」という思想。若々しく生命力に満ち溢れた状態を尊び、いつでも常に新しく、清浄であることを良しとする考えのもと、
「長年、酒を造っていても、毎回同じことを繰り返していては良い酒は造れない」と、米を見極め、気候の変化を鋭く感じ取り、醪の声に耳を澄ます…そのたびごとに感覚を研ぎ澄ませて、
最善を模索し続ける。そうやって、河武醸造は長年の伝統を受け継いできました。「古くて、新しい」という河武醸造の酒造りは、培ってきた技術の上に安寧することなく、常に新鮮な心持で取り組むことで成り立ちます。
「新ブランド【SHIKI-式-】」
2020年10月、新たな試みとして、河武醸造にて新たに立ち上げられたブランドがこちらの【SHIKI-式-】(しき)。
美しい宮川水系の湧水と、弓形穂(ゆみなりほ)という酒米で造られます。
弓形穂は、山田錦の祖先といわれる「伊勢錦」の突然変異米。
新しい酒米で、世界的に見てもこの酒米で醸しているお酒は【SHIKI-式-】以外に無い、まさに唯一無二の酒が誕生しました。
式が目指すもの
目指したのは、一日の終わりに、飲む人の心を洗い、潤すような日本酒の体験。
日々忙しく、自分に立ち戻る時間もない、そんな方に、ひと時、新たな息吹を吹き込んでくれるような新しい酒。
自分を内側から満たす、静なる安らぎを与えてくれるようなひと時を、【SHIKI-式-】は私たちに与えてくれるでしょう。