杜氏の加藤さんはもともと建築業界で働いていましたが、当時、主にワインを愛飲していたのですが、あるとき、薬缶に酒を入れて直接火にかけて温めた燗酒を飲まされたのがきっかけで、今までに飲んだことのない美味しさに、日本酒造りの虜のなってしまい転職したそうです。
その頃に生もとの造りの旨さも知り、徐々に加藤杜氏の中で旨い日本酒の輪郭が明確になってきたそうです。
平成16年の仕込みより、この生もと仕込みが本格的に取り組まれています。
生もとで造られたお酒は、酵母菌が極めて厳しい環境で育てられる為、弱い者は死に絶え、優れた者だけが生き残ることから、もろみ末期までその勢いが衰えず、完全発酵したお酒が出来上がります。
このため、熟成して旨みが増し、キレがよくなり、しかもコクのある理想的なお酒に仕上がります。
加藤杜氏曰く―、『生もと造りは本当に手がかかる。でも全ての作業には、全部意味があるんです。その一つひとつの作業を手抜きせずに重ねて、嘘のない酒造りをしなければ、旨い酒を飲むことが出来ない。
それは、飲み手である自分たちが一番よく知っている。』つまり、手間と時間をかけ、思いをかけることで、微生物の力がより顕わになり、旨い酒が出来ると言うこと。
米本来の旨みを出来るだけ残し本来の酒の味を味わってもらいたい。そんな蔵元の思いのこもったお酒を醸しています。
また、『生酒以外は常温で保管してほしい。』とのこと。 熟成による味わいの変化がこの蔵の酒のもう一つの魅力です。